もののふチゲん

子猫と俺の物語 【後編】

次の日の朝、友人の携帯が鳴った。
「うんうん、分かった。ありがとね」

「どうした?」
友人に尋ねる。

「貰い手がきまったよ。同じクラスのやつの友達が飼いたいって」
「ふーん。どんなやつ?」
「あー、なんか彼女と一緒に暮らしてるんだと。悪いやつじゃないみたいよ」
「そうか。よかったね」

複雑だった。いろんな事情によりずっと飼うことはできなかったので。
悪いやつじゃないみたいだし可愛がってもらえるだろう。
そう思うしかなかった。

午後にその貰い手に届けるという話だった。
残された時間はあと数時間。
「ケンケンよ、残りのわずかな時間、一緒に遊ぼうぜ」

複雑な思いの中、残された時間はあっという間に過ぎていった。

約束の時間。ケンケンとのお別れの時。
私は家でお見送り。

「たっぷり可愛がってもらえよ。粗相するなよ」
ケンケンを撫でて最後のお別れ。
トイレとミルクを友人に託し、静かに見送った。

部屋に戻ると、そこには寂しさがあった。
さっきまでケンケンのいた場所。今はもう何もない。
あっという間の2日間だった。
短い間だったが、それでも十分すぎるくらいのモノがあった。
凝縮された濃密な2日間。

部屋の片隅にはケンケンが使っていたお皿。
「これでミルク飲んでたんだよなぁ」
あっという間に過ぎた時間は、まるで夢だったかのような、そんな時間だった。


あれから10年あまり。
ケンケンは元気だろうか。きっとケンケンではないのだろう。
今でもたまに思い出す。

ケンケン。
俺の中でお前はずっとケンケンだからな。


おしまい
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by chigen | 2008-06-05 19:59 | 自我
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